背景・経緯
工程が遅れたとき、選べる手段は限られている。ファストトラッキングとクラッシングの比較解説(新しいタブで開きます)で整理されているとおり、代表的なのはこの2つである。
クラッシングは、クリティカルパス上の作業に人員や設備といった追加資源を投入して期間を縮める。ファストトラッキングは、本来は順番に実施する予定だった作業を部分的に並行させる。
詳細・ポイント
両者の本質的な違いは、何を代償にするかである。クラッシングはコストを引き受けてリスクを抑え、ファストトラッキングはコストを据え置いたままリスクを引き受ける。
建設現場でのファストトラッキングは、設計が固まりきらないうちに先行工事へ着手する形で現れることが多い。躯体を進めながら仕上の詳細を詰めるような進め方は、手戻りが発生した場合の損失が大きい。適用するなら、変更可能性の低い部位に限定するのが原則である。
業界への波及効果
人手不足の局面では、クラッシングの前提である「増員できる」が成立しにくい。結果としてファストトラッキング側に寄り、手戻りリスクが増えるという構図が起きやすい。
工期に関する基準の整備により、無理な短縮そのものが問題視されるようになった。回復手段の検討と並行して、工期変更の協議を進める判断も選択肢に入る。
実務者のアクション
どちらを選ぶにせよ、適用先はクリティカルパス上でなければ意味がない。経路外の作業をいくら急がせても工期は動かない。
ファストトラッキングを選ぶ場合は、手戻りが起きたときの損失額を先に見積もっておきたい。その額が増員コストを上回るなら、クラッシングの方が合理的である。