背景・経緯

国土交通省が進めるi-Constructionは、測量から設計、施工、検査、維持管理までの各段階でICTを活用し、建設現場の生産性を高める取り組みである。マシンコントロール・マシンガイダンス付きの建設機械、3次元設計データ、UAVやレーザースキャナによる出来形計測などが公共工事の標準的な手法として定着してきた。国土交通省はこれをさらに進めるi-Construction 2.0を掲げ、省人化と自動化に軸足を移している。

一方で、ICT活用工事に対応できる技術者の育成は現場ごとにばらつきがある。機器やソフトウェアの操作は習得できても、なぜその計測方法を選ぶのか、出来形管理基準にどう対応するのかまでを体系的に説明できる人材は限られる。この状況に対して一般社団法人日本建設機械施工協会(JCMA)が実施しているのが「JCMA ICT施工 検定試験」である。制度の趣旨と各年度の実施要領はJCMAの検定試験案内(新しいタブで開きます)で公開されている。

協会はこの検定について、i-Construction 2.0をより広く普及させ、ICT活用工事に関する正しい顧客説明が可能な人材の育成を目的として掲げている。操作技能の証明というより、発注者や社内に対して技術的な説明ができる水準を担保する位置づけである。

詳細・ポイント

検定で問われる範囲は、i-Constructionの基本的な考え方、測量・計測技術、ICT建設機械の操作に関する知識などである。ICT活用工事は、起工測量、3次元設計データの作成、ICT建機による施工、出来形管理、電子納品という一連の流れで構成される。この流れのどの段階で何が求められるかを理解しているかが問われることになる。

実施体制は本部に加えて支部単位でも組まれており、関西支部、九州支部、中国支部などがそれぞれ受付を案内している。地方の技術者が受験しやすいよう、実施拠点が分散している。年度ごとに受付開始の案内が出るため、受験を検討する場合は所属地域の支部情報を確認するのが確実である。

制度の特徴として、合格後に「合格者更新講習会」が用意されている点が挙げられる。ICT施工は機器・ソフトウェア・基準類のいずれもが更新の早い領域であり、一度合格した知識が数年後にそのまま通用するとは限らない。更新講習を通じて最新の基準や技術動向を確認する仕組みが組み込まれている。

なお、ICT活用工事に取り組むこと自体に、この検定の合格が法令上の要件として課されているわけではない。あくまで社内の技術力の証明や、発注者への説明能力を担保する手段として活用される性格のものである。公共工事の総合評価における評価項目の扱いは発注者ごとに異なるため、個別の入札公告で確認する必要がある。

業界への波及効果

ICT施工の普及段階は、導入するかどうかの判断から、どう使いこなすかの段階へ移っている。国土交通省の直轄工事ではICT活用工事が広く実施されており、地方公共団体の工事にも広がりつつある。この過程で問題になるのが、施工者側の説明能力である。3次元データの精度や計測方法の妥当性を発注者に説明できなければ、協議が滞り、結果として現場が止まる。

検定のような共通の物差しがあると、企業は技術者の育成計画を立てやすくなる。誰がどの水準にあるかを社内で把握でき、配置や研修の判断材料になる。中小規模の建設会社にとっては、ICT施工に対応できることを対外的に示す手段にもなる。

i-Construction 2.0が省人化・自動化を掲げる以上、必要な知識の範囲は今後も広がる。自動施工や遠隔操作が実装段階に入れば、安全管理や施工体制の考え方も変わる。更新講習が制度に組み込まれているのは、この変化の速さを前提にしているためと考えられる。

実務者のアクション

ICT活用工事の担当を予定している技術者は、JCMAまたは所属地域の支部が公表する年度の実施案内で、受付期間と実施日程を確認する。受付は年度ごとに区切られるため、案内が出た時点で社内の受験計画を決めるのが確実である。

準備としては、i-Constructionの実施要領や出来形管理基準など、国土交通省が公表している基準類に一度目を通しておく。機器の操作経験があっても、基準の側から求められる精度や記録の要件を体系的に把握していないケースは多い。

すでに合格している技術者を抱える企業は、更新講習会の受付時期を管理し、失効させないよう社内で把握しておく。あわせて、受験者と合格者を社内で一覧化し、ICT活用工事の配置計画に反映させる。発注者への説明が必要な場面で、誰が対応できるかを事前に決めておくことが現場の停滞を防ぐ。