背景・経緯
建設業の工期をめぐる議論は、長らく受注者側の努力の問題として扱われてきた。国土交通省不動産・建設経済局建設業課が令和5年5月31日に公表した建設工事における適正な工期の確保に向けて(新しいタブで開きます)は、この構図に発注者側の責務を明確に置いている。
背景には、令和元年6月の建設業法改正で中央建設業審議会が工期に関する基準を作成・勧告できるようになったこと、そして令和6年4月から建設業にも罰則付きの時間外労働規制が適用されることがある。
詳細・ポイント
要点は、工期が受発注者双方の課題として位置づけられたことにある。受注者が時間外労働規制を遵守した工期を見積もっても、発注者がそれを受け入れなければ成立しない。制度は、発注者に対してその協力を求める形をとっている。
実務上の焦点は、工期の根拠をどう示すかである。「厳しい」という主観ではなく、準備期間・施工期間・後片付け期間ごとに必要日数を積み上げた資料があれば、協議は数字の議論になる。
業界への波及効果
民間発注においても、公的な基準の存在は交渉の参照点として機能する。オープン日から逆算して工期を決める慣行が根強い分野ほど、影響は大きい。
一方で、取引関係上の力関係がある中で受注者が基準を盾に交渉できるかは、依然として実効性の課題として残っている。
実務者のアクション
受注側は、見積提出時に工期の内訳を添える運用を定着させたい。契約後に不足を訴えるより、契約前に示す方がはるかに通る。
発注側は、事業計画の段階で基準に沿った工期を織り込むことが結果的に安全である。着工後の工期変更は、予算と対外説明の両面で負担が大きい。